九州大学別府病院 免疫・血液・代謝内科 堀内孝彦先生
医師の声
遺伝性血管性浮腫は稀な疾患です。稀であるからこそ、患者さん一人一人の症状や経過、その原因について詳しい情報を集めることは大きな意味があります。集めた情報を分析することによって、ご病気の理解を深め、治療をさらに進歩させることが可能になります。
ほとんどの遺伝性血管性浮腫の患者さんでは、補体C1インヒビターという分子がうまく機能できません。その結果、体の様々な部分に浮腫を生じるのです。補体C1インヒビターが機能できないという生まれながらの体質があるかどうかを、血液から取り出した遺伝子を調べることによって正確に診断できます。体質をもっていることがわかれば、まだ症状が出現していない方でも将来の発作に備えることができます。
さらに私たちは遺伝子を調べることによって、起こりうる発作の頻度や重症度を予測できないかについて研究を進めています。ご興味がおありになる方はNPO法人血管性浮腫情報センターまで遠慮なくお問い合わせください。
NPO法人血管性浮腫情報センター
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NPO法人血管性浮腫情報センター内お問い合わせ
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HAEと遺伝
HAEの明確な発生率や有病率は分かっていませんが、遺伝形式は常染色体の優性遺伝であることは明らかです。HAEのうち75%が常染色体優性遺伝で、25%が弧発例*と言われ、遺伝子変異の種類は200種以上報告されています。
常染色体優性遺伝では、常染色体にある遺伝子の一方に異常があれば有病となります。C1インヒビターの遺伝子異常を両親のいずれかが持つ場合、子供が遺伝子を受け継ぐ可能性は50%で、男女の差はありません。半々の確立で自分の子孫に遺伝子を残すことになります。
* 孤発例(新生変異):すべてが先祖から受継がれたものというわけでなく、両親とも正常だった遺伝子に新たに変異が起こる場合もあります。ここで新たに生まれた変異が遺伝すると、常染色体優性遺伝として伝わることになります。