医師の声
HAEかどうかわからない
~自分の症状に不安なあなたへ~
新潟市民病院 緩和ケア内科 野本 優二先生
たまに手が腫れるくらいで、それも自然に治るからいいや
家族にこの病気がいるけど、自分には症状が全く出ていないからいいや
ときどきお腹が痛くなるけど2~3日で自然に治るからいいや
遺伝する病気だとはっきりとわかりたくないからいいや
時間がないからいいや
どこにいっていいかわからないからいいや
お金がかかるからいいや
医者が嫌いだからいいや
採血が嫌いだからいいや
あなたが検査をためらう理由は100以上あるかもしれません。
私があなたに検査を受けて欲しい理由はたった一つです。
「あなたに死んでほしくないから」
HAE患者の半数以上は、生涯のうちに少なくとも1度は窒息の危険がある喉頭部(のど)の浮腫が生じる可能性があります。(参照:HAEの症状)
そのときに、HAE:遺伝性血管性浮腫という診断に基づいた正しい治療を受けないと死に至る危険があります。
正しい治療を受ければ、すぐに症状は改善し、翌日にはすっかり元気になります。
Q&A
監修者:京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 山下 浩平先生
HAEかどうかわからない
HAEだとどうなるの
- Q:03
- 血管性浮腫について教えてください。
- Q:04
- HAEは、どんな病気ですか?
- Q:05
- HAEは、どのように深刻な病気ですか?
- Q:06
- HAEを完全に治す方法はありますか?
- Q:07
- なぜHAEになるのですか?
- Q:08
- HAEには、どんな種類がありますか?
- Q:09
- HAEでも出産はできますか?
HAEかどうかわからない
Q.1子供に'むくみ'があって病院にかかりました、どこも悪くないなんてことありますか?
Q.2家族には同じ症状はありません。HAEではないですよね?
HAEだとどうなるの
Q.3血管性浮腫について教えてください。
Q.4HAEは、どんな病気ですか?
HAEの患者さんは、血液中のC1インヒビターという蛋白質が少ない、またははたらきが弱い状態になっているので、インヒビターの働きが足りません。医学用語では、C1インヒビター欠損症といい、遺伝性である場合と、突然に遺伝子が変化して起こる場合があります。C1インヒビターは、体のさまざまな反応を制御しています。制御している間は正常ですが、なにかの誘因(精神的ストレス、外傷や抜歯、過労などの肉体的ストレス、妊娠、生理、薬物など)があると、発作が起きたり、誘因があっても全く発作が起きない場合もあります。発作のときは、ブラジキニンやアナフィラトキシンという物質が血管透過性を亢進(血管外に水を出す)します。片手が腫れてグローブのように腫れては治まったり、腸などの消化管が腫れては治まったりを繰り返します。気道やのどが腫れると息苦しくなり、生命を脅かすほどひどく腫れることがあります。腸管粘膜に腫れが出る場合は、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などが見られます。
※C1インヒビターはC1-INHと表記され、C1エステラーゼインヒビター、C1インアクチベーターと同じものを指します。
Q.5HAEは、どのように深刻な病気ですか?
腫れの頻度、場所、程度は人それぞれです。喉の腫れは気道を塞ぐため、生命を脅かします。腫れが腸に起こった場合は、強い腹痛や不快感の原因となります。発作の大半は生命に関わりませんが、QOL(生活の質)に影響を及ぼさないように工夫していく必要があります。
Q.6HAEを完全に治す方法はありますか?
Q.7なぜHAEになるのですか?
HAEは、通常は遺伝性の病気です(常染色体優性遺伝形式*)。C1-INH遺伝子の異常は、親から子へ受け継がれます。HAEの約25%の方は初めて起こる突然変異が原因です(このような症例を孤発例といいます)。HAEの方が結婚をした場合、お子さんがHAEとなる可能性は50%です。
*常染色体優性遺伝 :
常染色体上に存在する1対の遺伝子の一方に異常があれば発症する。患者の子が同疾患を発症する可能性は、男女を問わず50%である。
Q.8HAEには、どんな種類がありますか?
Q.9HAEでも出産はできますか?
多くのHAEの患者さんが妊娠に成功して健康な赤ちゃんを出産していますが、50%の確率でお子さんがHAEの原因遺伝子を持って生まれてくるということも事実です。
妊娠中に発作が軽減することも増悪することもあり、第1子と第2子の時で必ず同じ状況とは限りません。妊娠によって症状が初めて起きる方もいます。世界アレルギー機構のガイドラインでは、妊娠中、授乳中のHAE発作に対する治療としては男性ホルモン製剤を使用しないように推奨しています。妊娠中・授乳中、陣痛・出産時の発作ではC1インヒビター補充療法をすることもあります。出産予定日より前に余裕をもったうえで、発作予防の計画、または出産時における発作への対応を良く話し合っておく必要があります。